
「歯がズキズキ痛む。もしかして神経を抜かないといけないのかな…」
「他院で『神経を取りましょう』と言われたけれど、本当に残せないのだろうか?」
歯の痛みだけでも辛いのに、治療への不安が重なると、どうしていいか分からなくなってしまいますよね。
一般的に「歯の神経(歯髄)」は、可能な限り残した方が歯の寿命は長くなると言われています。しかし、状況によっては、無理に残すことが逆にリスクとなり、抜いてしまった方が結果的に歯を守れるケースも存在します。
こんにちは。亀戸WADA歯科・矯正歯科、院長の和田です。
この「残すか、抜くか」の判断は、歯科治療の中で最も重要で、かつ繊細な診断が求められる場面の一つです。
この記事では、皆様が後悔のない選択ができるよう、私たちが普段診療室でどのような基準で判断しているのか、そしてもし神経を取ることになった場合、どのような治療が行われるのかについて、分かりやすく解説します。
大切なご自身の歯を守るための「正しい知識」として、ぜひお役立てください。
目次
- なぜ「神経」は大切なじの?歯における2つの役割
- 歯科医は見ている!「残せる痛み」と「残せない痛み」の違い
- 神経を残すための最後の砦「歯髄温存療法」とは
- 「抜く」は悪ではない?根管治療が必要になる本当の理由
- 治療は何回かかる?中断厳禁の「根管治療」ステップ
- 実はここが一番大事。再発を防ぐ「被せ物」の選び方
- よくあるご質問(痛み・回数・歯の寿命について)
- まとめ:その場の痛みだけでなく、10年後の歯を見据えて
1. なぜ「神経」は大切なの?歯における2つの役割
まず、なぜ私たち歯科医師が「できるだけ神経を残しましょう」と言うのか、その理由からお話しします。
歯の内部にある「歯髄(しずい)」と呼ばれる神経組織には、単に痛みを感じるセンサーとしての役割以外に、非常に重要な仕事があります。
① 歯に栄養と水分を届ける
神経と一緒には血管も通っており、歯に栄養や水分を供給しています。神経がある歯は、みずみずしい若木のように弾力があり、割れにくいのが特徴です。逆に神経を失った歯は、水分が失われて枯れ木のようになり、脆く割れやすくなってしまいます。
② 異変を知らせる防御機能
虫歯菌が侵入してきた際に、痛みとしてシグナルを出したり、防御壁を作ったりして歯を守ろうとします。神経がなくなるとこのセンサーが働かなくなるため、次回の虫歯に気づくのが遅れ、気づいた時には抜歯寸前…という事態になりかねません。
つまり、神経を残すことは、歯の「寿命」そのものを伸ばすことに直結するのです。
2. 歯科医は見ている!「残せる痛み」と「残せない痛み」の違い
では、痛ければすぐに神経を抜くのかというと、そうではありません。私たちは患者さまの症状とレントゲン等の画像所見を組み合わせて、「回復の見込みがあるか」を慎重に見極めます。
【神経を残せる可能性が高いケース】
- 冷たいものが一瞬しみるが、すぐに治まる。
- 甘いものを食べると痛いが、何もしなければ痛くない。
- レントゲンで、歯の根の先に黒い影(炎症)が見られない。
この段階であれば、虫歯菌の侵入がまだ浅く、炎症が「可逆性(元に戻る)」である可能性が高いため、神経を残す治療を優先します。
【神経を抜く(根管治療)が必要なケース】
- 何もしなくてもズキズキと痛む(自発痛)。
- 夜、痛みで目が覚める(夜間痛)。
- 温かいものを飲むと痛みが強くなる。
- 噛むと響くような痛みがある。
- 歯ぐきが腫れて、膿が出ている。
これらの症状がある場合、残念ながら炎症は「不可逆性(元に戻らない)」まで進行しており、細菌が神経の奥深くまで侵入しています。無理に残すと、細菌が顎の骨まで達して顔が腫れ上がったり、全身に菌が回ったりするリスクがあるため、神経を取り除く決断をします。
3. 神経を残すための最後の砦「歯髄温存療法」とは
「深い虫歯だけど、なんとか神経を残したい」
そのような場合、条件が合えば「歯髄温存療法(覆髄処置)」という選択肢があります。
これは、虫歯を慎重に取り除いた後、神経が露出してしまった部分に「MTAセメント」などの生体親和性が高く殺菌作用のある薬剤を詰め、神経を保護して封鎖する方法です。
成功すれば神経を温存できますが、適応には限りがあり、治療後に痛みが引かない場合は、最終的に根管治療へ移行することもあります。「まずは残す可能性に賭けてみる」という治療法とお考えください。
4. 「抜く」は悪ではない?根管治療が必要になる本当の理由
「神経を取る=歯が死ぬ」というイメージから、根管治療を拒む方もいらっしゃいますが、必要なタイミングで適切に処置を行うことは、決して悪いことではありません。
すでに細菌に感染して壊死してしまった神経を放置することこそが、最も危険です。
根管の中が細菌の巣窟となり、根の先から毒素が溢れ出し、歯を支える骨を溶かしてしまいます(根尖性歯周炎)。こうなると、最悪の場合は抜歯に至ります。
根管治療(こんかんちりょう)とは、汚染された神経や細菌を徹底的に取り除き、歯の内部を洗浄・消毒して、「歯を抜かずに使い続けられる状態にリセットする」ための精密な治療なのです。
5. 治療は何回かかる?中断厳禁の「根管治療」ステップ
根管治療は、患者さまにとっても通院回数がかかり、根気のいる治療です。しかし、一つひとつの工程には意味があります。
感染源の除去・拡大
まずは汚染された神経を専用の器具(ファイル)で取り除き、薬液が届きやすいように神経の通り道を広げます。
洗浄・消毒(ここが重要!)
薬剤を使って根の中を洗浄し、細菌を死滅させます。一度で無菌状態にするのは難しいため、数回に分けて薬の交換を行うのが一般的です。
根管充填(こんかんじゅうてん)
痛みや膿が治まり、きれいになったことを確認したら、空洞になった根の中に「ガッタパーチャ」というゴムのような防腐剤を隙間なく詰めて密閉します。
【ご注意ください】
治療の途中で「痛くなくなったから」と通院を中断してしまうのが一番危険です。仮のフタのまま放置すると、隙間から新たな細菌が入り込み、治療前より状況が悪化して、抜歯しか選択肢がなくなることもあります。必ず最後まで通い切ってください。
6. 実はここが一番大事。再発を防ぐ「被せ物」の選び方
根管治療が終わっても、それで安心ではありません。実は、治療後の歯の寿命を左右するのは、その上の「土台」と「被せ物(クラウン)」の精度です。
どれだけ根の中をきれいにしても、被せ物の隙間から唾液(細菌)が入り込めば、再感染を起こしてしまいます。
また、神経を失った歯は脆くなっているため、噛む力に耐えられるよう、適切な「土台(ファイバーコアなど)」で補強し、精度の高い被せ物でしっかりと蓋(シールド)をする必要があります。
当院では、再発リスクを抑えるために、適合の良いセラミック治療や、歯ぎしりがある方へのマウスピース(ナイトガード)の併用など、治療後の生活まで見据えたご提案をしています。
7. よくあるご質問(痛み・回数・歯の寿命について)
- Q. 治療中や治療後に痛みはありますか?
- A. 治療中は麻酔を使いますので痛みはありません。治療後、麻酔が切れた際や、根の先に薬が届いた刺激で数日間ズーンとした痛みや、噛んだ時の違和感が出ることがありますが、徐々に落ち着いていきます。我慢できない痛みや腫れがある場合は、すぐにご連絡ください。
- Q. 根管治療は何回くらいかかりますか?
- A. 根の形や汚れ具合によりますが、通常は3回〜5回程度かかることが多いです。再発させないための丁寧な洗浄・消毒には、どうしても時間が必要です。
- Q. 神経を取ったら、その歯はもう長持ちしないのですか?
- A. 確かに健康な歯に比べれば強度は落ちますが、適切な根管治療と、精度の高い被せ物を行えば、その後10年、20年と機能させることは十分に可能です。「神経を取ったら終わり」ではなく、「そこからどう守るか」が大切です。
8. まとめ:その場の痛みだけでなく、10年後の歯を見据えて
歯の神経は、一度失うと二度と元には戻りません。
だからこそ、私たちは「残せる可能性」を最後まで探ります。しかし同時に、見極めを誤って放置し、歯そのものを失うリスクも避けなければなりません。
「痛いのは嫌だからとりあえず抜いて」でもなく、「絶対に抜きたくない」と固執するのでもなく、今のあなたの歯の状態にとって「何がベストなのか」を、冷静に、医学的な根拠に基づいて判断することが大切です。
亀戸で根管治療や、神経を残す治療についてお悩みの方は、亀戸WADA歯科・矯正歯科へご相談ください。
現在の状況をレントゲンやCTで詳しく診断し、メリット・デメリットを含めて丁寧に説明させていただきます。一緒に、あなたの大切な歯の未来を考えていきましょう。






























