
「歯を白くしたいのですが、まずはクリーニングで白くなりますか?」
診療室では、こうしたご相談をよくいただきます。日常の汚れを落とす“クリーニング”と、歯そのものの色調に働きかける“ホワイトニング”は、名前は似ていても目的も仕上がりもまったく別物です。
大切なのは、今の歯の色が“汚れによるくすみ”なのか、“歯質そのものの色”なのかを見極めること。ここを間違えると、「思ったほど白くならなかった」「逆にしみた」という残念な結果につながりかねません。この記事では、初めての方にもわかりやすい順序で、違いと選び方、併用の考え方までを整理します。
目次
まず押さえておきたい違い
クリーニングは、歯の表面に付着したプラークや歯石、着色(ステイン)をプロの器具で取り除き、元の歯面を素直に見えるように整えるケアです。対してホワイトニングは、過酸化物を主成分とする薬剤でエナメル質の有機成分に働きかけ、歯質そのものの色調を明るくします。
例えるなら、クリーニングは“窓ガラスの汚れを落とす”、ホワイトニングは“ガラスそのものの透明感を引き上げる”イメージです。
クリーニングでできること
クリーニングでは、毎日の歯みがきでは取り切れない歯石やバイオフィルムを機械的に除去し、エアフロー等でコーヒー・紅茶・タバコ由来の着色を落とします。滑沢に仕上げることで汚れの再付着を抑え、口臭・歯周病リスクの軽減にも役立ちます。
「最近歯がくすんで見える」という方は、まずクリーニングだけで見違えるケースも少なくありません。逆に、生まれつきの黄色味・加齢変化・テトラサイクリン歯など、歯質由来の色はクリーニングでは変えられません。ここを見極めるのが歯科の役割です。
ホワイトニングでできること
ホワイトニングは、薬剤がエナメル質内の色素に化学的に作用し、歯そのもののトーンを上げます。
方法は大きく二つ。
オフィスホワイトニング:院内で高濃度薬剤を短時間で作用させ、即効性を重視。
ホームホワイトニング:マウスピースと低濃度薬剤でゆっくり穏やかにトーンアップし、後戻りが少ない傾向。
目標の白さ、スケジュール、しみやすさの体質を踏まえて選択します。人工物(詰め物・被せ物)の色は変わらないため、必要に応じて順序を設計し直すこともあります。
どちらから始めるかの判断基準
初めての方には、クリーニングを先に行うことを基本にしています。理由は二つ。
ひとつは、薬剤の作用を邪魔する表面の汚れを取り除くことで、ホワイトニングのムラを防げるから。もうひとつは、クリーニングだけで満足する(=ホワイトニング不要とわかる)方が一定数いらっしゃるからです。
クリーニング後も「もっと明るくしたい」と感じる場合、歯質の色が目標に届かない原因と判断し、ホワイトニングをご提案します。
しみが心配な方への配慮
ホワイトニング中の“しみ”は、一過性の知覚過敏がほとんどです。
私たちは、
- 事前の知覚過敏チェック(露出セメント質・くさび状欠損・クラックの有無)
- 濃度・時間・回数の微調整
- フッ化物や硝酸カリウムなどの術前後塗布
- ホームの場合は使用間隔の調整
といった工夫で、できるだけ快適に進められるようにしています。しみが出た場合は、無理をせず一旦間隔を空けることが結果的に近道です。
併用で効果を高める考え方
仕上がりと持続性を両立したい方には、「クリーニング → オフィスでスタート → ホームで育てる」という流れをよく採用します。短期の見栄えを作り、その後ホームで色の定着を図るイメージです。
イベント前に急ぐのか、じっくりでも自然な白さを目指すのか――目的に合わせて順番と配合を決めましょう。
よくある誤解と注意点
「クリーニングだけで歯が真っ白になる」――汚れ由来なら見違えますが、歯質の色は変わりません。
「ホワイトニングは歯を溶かす」――薬剤はエナメル質表面を脱灰するのではなく、内部の着色有機質に作用します。正しい方法で行えば、歯を削ることなく明るさを引き上げられます。
「後戻りは防げない?」――飲食習慣でゆっくり色は戻りますが、ホームでのメンテナンスと定期クリーニングでコントロール可能です。
注意点として、妊娠・授乳中は避けること、むし歯や重い歯周炎がある場合は先に治療を優先すること、知覚過敏が強い部位は計画を調整すること――この3点は必ず確認します。
まとめ
くすみの正体が汚れなら「クリーニング」、歯質の色なら「ホワイトニング」。まずは見極めが肝心です。
初回はクリーニングを先に。それで足りなければホワイトニングを重ねるのが、遠回りに見えて最短です。
しみが不安でも濃度・時間・間隔の調整で多くの方が快適に進められます。
即効性を重視するならオフィス、持続性と自然さならホーム、バランス重視は併用という選び方が目安になります。
「自分はどこから始めるのが良いか」を知る第一歩は、現状の色の理由を歯科で評価することです。亀戸で無理のない計画を立てたい方は、まずはクリーニングからご相談ください。仕上がりのイメージとスケジュールを、診療室で一緒に描いていきます。






























