
「歯医者さんに、持病のことを話す必要はありますか?」
「歯ぐきの出血が、糖尿病に良くないと聞きました」
診察室では、こうしたご不安の声をよく耳にします。
結論から申し上げますと、歯周病は決して「お口の中だけの問題」ではありません。長引く歯ぐきの炎症は、血液を介して全身を巡り、糖尿病や心臓の病気、そして新しい命を育む妊娠期にも影響を与えることが分かっています。
「痛みがないから」と放置してしまうのが、歯周病の怖いところです。
この記事では、私が日々の診療で患者さんにお伝えしている「歯周病と全身の深い関係」と、持病や妊娠中の方でも安心して取り組める「ケアのポイント」について丁寧にお話しします。
体調管理の一環として、まずはお口の中のリスクを知ることから始めましょう。
目次
- なぜ口の病気が体に影響するの?(炎症のメカニズム)
- 特に注意したい3つのケースと対策
- 「お薬手帳」が重要!歯科と医科の連携について
- 院長が提案する「無理のない」セルフケア再設計
- 歯科医院で行うプロフェッショナルケアの流れ
- 全身疾患と歯科治療に関するよくある質問
- まとめ:お口を整えることは、全身を守ること
なぜ口の病気が体に影響するの?(炎症のメカニズム)
歯周病は、歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に細菌が溜まり、慢性的な炎症が続く病気です。
「口の中だけの小さな炎症」と思われがちですが、実は歯周病によって炎症を起こしている表面積をすべて合わせると、成人の「手のひらサイズ」になると言われています。
もし、手のひらサイズの潰瘍が体にずっとあったらどうでしょうか?
そこから発生した「炎症性物質(サイトカイン)」や「細菌の毒素」は、血流に乗って全身に運ばれていきます。これが、離れた臓器や血管、代謝機能に悪影響を及ぼす主な理由です。
痛みがなくても、「体の中に常に炎症がある状態」を作ってしまうことが、最大のリスクなのです。
特に注意したい3つのケースと対策
ここでは、特に密接な関係がある3つの状況について解説します。
ケース1:糖尿病と歯周病の「負の連鎖」
糖尿病と歯周病は、お互いに悪影響を与え合う「双方向」の関係にあります。
- 糖尿病→歯周病: 高血糖状態が続くと免疫力が低下し、歯ぐきの組織も脆くなるため、歯周病が重症化しやすくなります。
- 歯周病→糖尿病: 歯周病による炎症物質が血液に入ると、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまい、血糖コントロールが悪化します。
【当院での対策】
歯周病治療を行うことで、HbA1c(血糖の平均値)が改善するというデータも多数あります。当院では、内科の数値も共有させていただきながら、歯周組織の改善を目指します。
ケース2:心血管疾患(心臓・脳血管)と細菌のリスク
動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の原因の一つとして、血管内の慢性的な炎症が挙げられます。
歯周病菌やその毒素が血管内に入り込むと、血管の内壁を傷つけたり、血栓(血の塊)を作りやすくしたりするリスクが高まると考えられています。
【お薬について】
「血液をサラサラにする薬(抗凝固薬など)」を飲んでいるから、怖くて歯医者に行けないという方がいらっしゃいます。しかし、多くの場合はお薬を止めることなく、安全にクリーニングや治療が可能です。自己判断で受診を控えず、まずはご相談ください。
ケース3:妊娠期の歯ぐきの変化と赤ちゃんへの影響
妊娠中は、女性ホルモンの増加により、特定の歯周病菌が増えやすくなります(妊娠性歯肉炎)。さらに、つわりで歯磨きが十分にできなかったり、食事回数が増えたりすることで、環境が悪化しがちです。
重度の歯周病は、炎症物質の影響で子宮の収縮を促してしまい、「早産」や「低体重児出産」のリスクを高める可能性が指摘されています。
【妊婦さんへのアドバイス】
妊娠を考え始めたら「プレコンセプション・ケア(妊娠前の健康管理)」として歯科検診を受けましょう。妊娠中であっても、安定期(妊娠中期)であれば、無理のない範囲でクリーニングを受けることが可能です。
「お薬手帳」が重要!歯科と医科の連携について
当院では初診時に必ず、服用中のお薬や持病について詳しくうかがいます。
これは、以下のようなリスク管理を行うためです。
- 出血リスクの管理: 血液をサラサラにする薬の服用状況に合わせた処置の選択。
- 薬剤の飲み合わせ: 痛み止めや化膿止めを処方する際の安全確認。
- 治療のタイミング: 糖尿病の数値や、妊娠週数に合わせた無理のない計画立案。
必要に応じて、かかりつけの内科や産婦人科の先生にお手紙を書き、情報を共有(対診)することもあります。「歯科だけで抱え込まない」ことが、安全な治療への近道です。
院長が提案する「無理のない」セルフケア再設計
持病がある方や妊娠中の方は、体調が優れない日もあるでしょう。100点満点を目指さず、「続けられるケア」に切り替えることが大切です。
- 道具を見直す: 大きなヘッドの歯ブラシで闇雲に磨くより、小さめのヘッドでピンポイントに磨くほうが効率的です。
- 歯間ケアを主役に: 炎症の主戦場は「歯と歯の間」です。フロスや歯間ブラシを1日1回通すだけで、細菌量は激減します。
- タイミングを工夫する: 妊婦さんなら「体調が良い時間帯」に、糖尿病の方なら「夜の完食を控えた後」になど、生活リズムに合わせて調整しましょう。
歯科医院で行うプロフェッショナルケアの流れ
- 検査と現状把握: 歯周ポケット検査やレントゲンで、どこに炎症があるか、骨の状態はどうかを「見える化」します。
- 基本治療: 専用の機器で、ご自身の歯ブラシでは取れない歯石やバイオフィルム(細菌の膜)を徹底的に除去します。
- 再評価: 炎症が引いたかどうかを確認し、必要であれば追加の処置を行います。
- メンテナンス: 治療後は3ヶ月ごとの検診が目安ですが、糖尿病や妊娠中などリスクが高い時期は、1〜2ヶ月に短縮して、こまめに管理することをお勧めします。
全身疾患と歯科治療に関するよくある質問
- Q. 歯ぐきから血が出ますが、そのまま磨いていいですか?
- A. はい、やさしく磨き続けてください。出血は「汚れが溜まって炎症がある」サインです。怖いからと磨くのを止めると、汚れが溜まりさらに悪化します。柔らかめのブラシで丁寧に汚れを落とせば、通常1〜2週間で出血は止まります。
- Q. 妊娠中にレントゲン撮影や麻酔をしても大丈夫ですか?
- A. 歯科のレントゲンは撮影範囲が口元だけであり、防護エプロンも着用するため、お腹の赤ちゃんへの影響はほぼありません。麻酔も局所麻酔ですので、通常量であれば問題ありませんが、ご不安な点は必ず施術前にご相談ください。
まとめ:お口を整えることは、全身を守ること
歯周病の治療は、単に「歯を守る」だけでなく、糖尿病のコントロールを助けたり、血管を守ったり、元気な赤ちゃんを迎える準備をしたりと、全身の健康管理そのものです。
「今は痛くないから大丈夫」ではなく、「今のうちにリスクを摘み取っておこう」という前向きな気持ちで、ぜひ歯科医院を活用してください。
もし、亀戸周辺で「持病があって歯科治療が不安」「妊娠中の歯のケアを知りたい」とお考えなら、ぜひ一度[クリニック名]へご相談ください。
医科とも連携し、あなたの今の体調に合わせた安全で現実的なプランを、診療室で一緒に作っていきましょう。






























