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2026.10.29更新

神経を抜いた歯は割れやすい?「歯根破折」から大切な歯を守るための被せ物と生活習慣

 

こんにちは。亀戸WADA歯科・矯正歯科、院長の和田です。

大きな虫歯の治療で「歯の神経を抜きましょう(根管治療)」と言われ、無事に治療が終わって被せ物が入ったとき、多くの方が「もうこの歯は痛くならないし、これで一安心だ」とホッとされることと思います。

しかし、歯科医師として皆様にどうしても知っておいていただきたい重要な事実があります。それは、「神経を抜いた歯は、健康な歯に比べて圧倒的に割れやすくなり、将来的に抜歯になるリスクが高まる」ということです。

実は、日本人が歯を失う(抜歯になる)原因として、歯周病、虫歯に次いで第3位となっているのが、歯の根っこがパキッと割れてしまう「歯根破折(しこんはせつ)」というトラブルです。そして、この歯根破折を起こす歯のほとんどが、過去に「神経を抜いた歯(失活歯)」なのです。

せっかく時間と回数をかけて根っこの治療をしたのに、数年後に根が割れて抜歯になってしまっては、これほど悲しいことはありません。私は「一度治療した歯を1日でも長く残すこと」を診療のモットーとしていますが、そのためには「なぜ神経を抜くと歯が割れるのか」という理由を知り、治療の段階から割れないための工夫(土台や被せ物の選択)と、日々の生活習慣でのケアを徹底することが不可欠です。

この記事では、神経を抜いた歯が脆くなる医学的なメカニズムから、歯根破折のサイン、そしてあなたの大切な歯を抜歯から守り抜くための具体的な対策について、専門的な視点から分かりやすく解説いたします。

 

目次

 

1. なぜ「神経を抜いた歯」は割れやすくなるのか?3つの理由

「歯の神経を抜く」という処置は、正確には歯の内部にある神経だけでなく、そこを並走している「血管」も一緒に取り除く処置(抜髄:ばつずい)を指します。この神経と血管の束を専門用語で「歯髄(しずい)」と呼びますが、歯髄を失った歯は、以下の3つの理由から急激に脆くなります。

1-1. 栄養と水分が途絶え「枯れ木」のような状態になる

歯髄の中を通る血管は、歯の内部(象牙質)に絶えず水分や栄養分、酸素を送り届け、歯のしなやかさや弾力性を保つという非常に重要な役割を担っています。
神経を抜いて血管がなくなると、歯への水分と栄養の供給が完全にストップします。イメージしていただくなら、生き生きとした「生木(なまき)」が、水分を失って乾燥した「枯れ木(かれき)」に変わってしまうようなものです。生木であれば強い力が加わっても適度にしなって耐えられますが、乾燥した枯れ木は弾力がないため、強い衝撃が加わるとパキッと簡単に折れてしまいます。これと同じ現象が、お口の中の歯でも起こるのです。

1-2. 治療によって歯の内部が大きく削られ、壁が薄くなる

神経を抜く治療に至るということは、そもそも大きな虫歯によって歯の大部分が溶かされてしまっている状態です。さらに、根管治療(根の中の消毒)を行うためには、器具が根の先まで届くように歯の内部をある程度削って広げる必要があります。
その結果、治療が終わった時点では、歯の内部が空洞になり、周囲の壁(残存歯質)が非常に薄くペラペラな状態になってしまいます。物理的に歯の体積が減っているため、噛む力に対する強度が著しく低下しているのです。

1-3. 痛みのセンサーが失われ、過度な力で噛みすぎてしまう

生きている健康な歯には神経があるため、小石や極端に硬いものを噛んでしまった瞬間、「イタッ!」と危険を察知して、反射的に噛む力を緩める防御機能が働きます。
しかし、神経を抜いた歯にはこの「痛みのセンサー」がありません。歯に限界を超えるような異常な負荷がかかっていても痛みを感じないため、無意識のうちに思い切り強い力で噛み続けてしまい、ある日突然、限界を迎えて歯が割れてしまうのです。

 

2. 抜歯の原因第3位!「歯根破折(しこんはせつ)」の恐ろしさと初期サイン

歯茎の上に出ている部分(被せ物など)が欠けただけであれば、作り直すことで歯を残せます。しかし、歯茎の奥深く、骨の中に埋まっている歯の根っこが割れてしまう「歯根破折」は、歯にとって致命的なダメージとなります。

2-1. 歯根破折が起きるとどうなる?(細菌感染と骨の吸収)

歯の根にヒビが入ったり割れたりすると、そのわずかな割れ目(亀裂)に、お口の中の細菌が侵入して繁殖を始めます。根の割れ目に入り込んだ細菌は、どんなに優れた器具や消毒薬を使っても完全に取り除くことができません。
細菌が割れ目から周囲の組織へと毒素を出し続けると、体を守ろうとする防御反応によって、歯を支えている大切なあごの骨(歯槽骨)が急速に溶かされていきます。周囲の骨が溶けてなくなってしまうため、また、割れた根を元通りに接着することも現在の歯科医学では極めて困難であるため、歯根破折を起こした歯は、多くの場合で「抜歯」という悲しい決断を下さざるを得なくなるのです。

2-2. 見逃さないで!歯の根が割れたときに現れる4つの症状

神経がない歯は、根が割れても初期の段階では強い痛みが出ないことが多く、発見が遅れがちです。以下のようなサインが現れたら、歯根破折が起きている可能性が高いため、すぐに歯科医院を受診してください。

  • 噛んだときにだけ、なんとなく違和感や鈍い痛みがある
  • 歯茎の特定の場所(根の先あたり)に、ニキビのような白いぷつっとしたできもの(フィステル)ができ、潰れてはまたできるを繰り返す
  • 被せ物が何度も頻繁に外れる、または被せ物ごと歯がグラグラと揺れる
  • 特定の歯の周りの歯茎だけが赤く腫れ、歯周ポケットが急激に深くなっている

 

3. 歯根破折を防ぐために最も重要な「土台(コア)」と「被せ物」の選択

神経を抜いた後の空洞になった歯には、被せ物(クラウン)を支えるための「土台(コア)」を建てて補強する必要があります。実は、将来その歯が割れるかどうかは、この「土台に何の素材を使うか」と「どのように削って被せるか」という治療の選択によって大きく左右されます。

3-1. 金属の土台(メタルコア)が引き起こす「くさび効果」の危険性

日本の保険診療で長らく主流として使われてきたのが、銀合金などで作られた「メタルコア(金属の土台)」です。金属は非常に硬く丈夫な素材ですが、実は「硬すぎること」が歯にとっては最大の弱点となります。
人間の歯(象牙質)には適度なしなり(弾性)がありますが、金属にはしなりがありません。毎日の食事や歯ぎしりで強い噛む力が加わったとき、歯はしなるのに、中に入っている金属の土台は全くしならないため、根の内部の一点に強烈な力(応力)が集中してしまいます。
これは、丸太を割るときに打ち込む「鉄のくさび」と全く同じ原理です(くさび効果)。硬すぎる金属の土台が、噛むたびに内側から歯の根を押し広げ、数年後に根を真っ二つに割ってしまう原因となるのです。

3-2. 歯に優しくしなやかな「ファイバーコア」の圧倒的メリット

この「くさび効果」による歯根破折を防ぐために開発され、現在、私たち保存治療を重視する歯科医師が第一選択として強く推奨しているのが「ファイバーコア」です。
ファイバーコアは、グラスファイバー(ガラス繊維)の芯と、歯科用の強化プラスチック(レジン)を組み合わせて作る土台です。釣竿やテニスラケットにも使われるグラスファイバーは、強度が高いだけでなく、「人間の歯(象牙質)と非常に近いしなやかさ(弾性係数)」を持っています。
強い噛む力が加わっても、ファイバーコアが歯と一緒になって適度にしなり、力を優しく吸収・分散してくれるため、根の内部に応力が集中せず、歯根破折のリスクを劇的に下げることができます。また、金属を一切使わないため、歯茎が黒ずんだり金属アレルギーを引き起こしたりする心配もありません。

3-3. 精密な被せ物と「フェルール(歯の抱え込み)」の重要性

土台の上に入れる「被せ物」の設計も重要です。歯が割れるのを防ぐためには、残っているご自身の歯の根元部分を、被せ物のフチでぐるりとベルトのように抱え込む構造(専門用語でフェルール効果と呼びます)を作る必要があります。木樽が金属のタガ(輪)ではめ込まれることでバラバラにならずに強度を保つのと同じ仕組みです。
当院では、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)などの拡大視野を用いて、ご自身の健康な歯質を1ミリでも多く残す精密な形成を行い、歯にぴったりと適合して根元をしっかり抱え込む被せ物(セラミックやジルコニアなど)を作製することで、構造力学的に割れにくい環境を作り上げます。

 

4. 治療後の歯を一生守るために!今日からできる生活習慣と予防ケア

どんなに優れたファイバーコアと精密な被せ物を入れても、それだけで100%安心というわけではありません。その歯に「過剰な力」がかかり続ければ、やはり破折のリスクは高まります。治療後の歯を守るためには、患者様ご自身の生活習慣のコントロールが不可欠です。

4-1. 歯ぎしり・食いしばりから歯を守る「ナイトガード」の活用

歯根破折を引き起こす最大の敵は、睡眠中の「歯ぎしり」や「食いしばり」です。寝ている間は無意識のリミッターが外れるため、ご自身の体重の2倍以上(100kgを超えることも)もの凄まじい力が歯に直撃し続けます。
神経を抜いた歯が1本でもある方で、朝起きたときに顎が疲れている、歯がすり減っているといった歯ぎしりの兆候がある方には、就寝時に装着する医療用のマウスピース「ナイトガード」の使用を強くおすすめしています。ナイトガードがクッションとなって破壊的な力を分散し、身代わりとなって削れてくれることで、大切な歯を破折から守ることができます。

4-2. 硬い食べ物を同じ歯ばかりで噛まない意識

おせんべいや氷、ナッツ類、硬いお肉やフランスパン、スルメなどを好んでよく食べる方は注意が必要です。前述の通り、神経を抜いた歯は痛みを感じないため、ついついその歯ばかりを使って硬いものを噛み砕いてしまいがちです。
硬いものを食べるときは、小さく切ってから口に入れる、意識して左右の歯でバランスよく噛む、そして何より「神経を抜いた歯には無理をさせない」という意識を持つことが、歯の寿命を延ばすことに直結します。

4-3. 定期検診での「噛み合わせチェック」の重要性

お口の中の噛み合わせは、年齢とともに少しずつ変化していきます。周りの健康な歯が少しずつすり減っていく中で、硬い被せ物が入った歯だけがすり減らずに高く残ってしまうと、その歯ばかりに噛む力が集中する「早期接触(ハイポイント)」という危険な状態になります。
3ヶ月に一度の定期検診では、歯のお掃除だけでなく、この「噛み合わせのバランス」が崩れていないかをプロの目で厳しくチェックします。もし神経を抜いた歯に強い力がかかっているサインがあれば、被せ物の表面をミクロン単位でわずかに調整し、力を逃がす処置を行います。

 

5. まとめ:神経を抜いた歯こそ、最高レベルの守りを固めましょう

「神経を抜いた歯」は、痛みを感じなくなっただけであり、治って元通りの強い歯に戻ったわけではありません。むしろ、水分を失い、薄く脆くなった「最も守ってあげなければならないデリケートな歯」なのです。

  • そもそも神経を抜かずに済むよう、虫歯を早期発見・治療すること
  • 神経を抜くことになった場合は、マイクロスコープを用いた精密な根管治療で再発を防ぎ、歯質を極力削らずに残すこと
  • 歯を割るリスクのある金属の土台ではなく、歯と同じようにしなる「ファイバーコア」と、精密な被せ物で補強すること
  • 治療後はナイトガードや定期的な噛み合わせ調整で、過剰な力から歯を守り続けること

これらの一連のステップを一つひとつ丁寧に行うことが、抜歯という最悪の結末を回避し、一生涯ご自身の歯で美味しく食事を楽しむための唯一の道です。

「昔、神経を抜いて銀歯にした歯が、最近なんだか浮いたような感じがする」
「これから根の治療をするけれど、将来歯が割れないように一番良い方法で治したい」
「歯ぎしりがひどいので、神経のない歯が割れないか心配だ」

そのようなお悩みやご希望がございましたら、どうぞお気軽に当院へご相談ください。

亀戸で精密な根管治療やファイバーコアを用いた歯を残す治療、歯根破折の予防についてのご相談なら、亀戸WADA歯科・矯正歯科へお任せください。
患者様の大切な歯を1本でも多く、そして1日でも長く守り抜くために、最新の設備と技術をもって誠心誠意サポートさせていただきます。

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者情報

亀戸WADA歯科・矯正歯科 理事長 和田慎一郎

理事長

和田 慎一郎 | Shinichiro Wada

歯科大学卒業後、北海道の総合歯科医院での研鑽を経て、都内の会員制歯科医院にて10年間院長を歴任。「妥協のない最善の治療で多くの方の健康に寄与したい」という信念のもと、2016年に当院を開院。専門医連携による高度な治療と、予防を軸としたパーソナライズ治療の両立に注力している。

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